マトンとは成熟した仔羊の肉である（私談）。マトンに法的な定義はありませんが、現在では永久歯が生えた頃の羊を指すことが一般的ですが、1930年代のイギリスにおいては「ラム」は夏以降市場に出荷されクリスマス以降に販売される羊の肉は「マトン」と呼ばれました。マトン（Mutton）という言葉。中世英語時代（1066年のノルマン・コンクエスト以後15世紀後半頃までの英語の名称）にフランス語から入ってきた言葉。1066年にノルマン人（北フランスのバイキング）がイングランドの侵略と占領に成功したとバイユー・タペストリーにそのことが記されていますが、それ以来、フランス語は高級な人々の言葉であり、ゲルマン語の古英語は農民の言葉（それ自体がフランス語である）でした。この言語的な階級差によって、私たちの食肉用語は2つに分かれることになりました。古英語は、農民が泥臭く世話をする動物 (sheep)を表し、フランス語は、金持ちが食べる動物の肉（mutton）を表しました。マトンはラテン語の「multo」に由来し、雄の羊を指す言葉でした。乳を出し仔羊を産む雌羊よりも、雄の方が屠殺されることが多かったため、一般的に「羊の肉」を意味する言葉に変化し、私たちの語彙（ごい）になったのです。

さて・・・長くなりましたが、このウインナーの名前は「Mr.Mutton」。そんな歴史的背景から名付けた、当店初の成羊（マトン）100％生ウインナー誕生です。

肉を仕入れる際、特に諸外国から肉を仕入れる際には、その羊が「雄」なのか「雌」なのかの表記はありません。ありませんが、概ね雄であることは間違いない。時に男性的とも野性的とも言われたマトンの肉は、やはり雄羊が多いのは現代でも同じ。だからこのマトン肉に敬意を表し「ミスター」と名付けたこのウインナー。その正体はマトン１００％でお作りした生ソーセージ！ブラートブルスト、サルシッチャ、ウインナー！超粗挽きのマトン肉は、丸ごと１頭を全て使用したマトン全てを食べ尽くす仕様。そう、首から脚まで全ての部位です。そのマトン１頭に、一度乾燥させ水で戻したドライオニオン（結構高価なんです）をタップリ混ぜ込むと・・・焼いている香りはどこかジンギスカンを連想させます。そこに最高の国産ニンニクも投入！肉を食べている喜びを、改めて私達に与えてくれるマトン生ウインナーが誕生しました！

サイズは大人なら2〜3口で食べられる小さめ、ラムのウインナーと比べ明らかに「赤」が強いその見た目。ジューシーで肉の強さも感じつつ、香りは驚く程マイルド。そのまま食べても十分に旨いのですが、クミンを添えたり、ハリッサなどの中東〜アフリカあたりのフレバーを加えても旨い。さすがこれらはマトンに合います。そしてビールも旨くなります！！！

未だマトンに偏見をお持ちの方がいらっしゃったらぜひ食べて頂きたいこのウインナー。マトンは旨い！肉として旨い！19世紀のマトン全盛期には、マトンには様々なクラスや品質があると考えられていました。それは今も同じ。今も昔もマトンは一様なものではなく、しっかりきちんと育てたマトンは旨い。比較的短期間に供給が可能なラムとは異なり、時間を掛けて味わいを追求した「マトン」という肉。羊毛を取り終えた副産物ではく（昔はこれ）肉用として育てられた「マトン」という肉。これがいかに贅沢なのか？改めて気が付く時期が来たのでしょう（私にとっても）。かのジョージ・ワシントン（1723〜1799年）はこう語っています。「私の暮らしぶりは質素で、それを否定されるつもりはない。一杯のワインと少しのマトンがいつでも用意されている。」。人生を豊かにさせる「マトン」。美味しさは柔らかさだけに有らず。その肉が最も美味しくなる時期を見極める。マトンとは成熟した仔羊の肉である（私談）。壮大な感じで書いて参りましたが、気軽に楽しんで下さい（笑）

弱火〜中火で片面３〜4分ずつ。やけ具合をみてコロコロ回しながら中まで熱を通して下さい。